微睡み

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哀愁をそそる



見上げると、澄んだ空に雲がひとつ。もう冬も近いと思う。鼻先がツンと痛むような風に吹かれながら、変わってゆく景色をじっと観察するのは、まァ悪くなかった。愛らしい笑い声を響かせながら、ランドセルを背負ってわたしの横を通っていくあの子たち。わたしが来た道へ向かっていく──つまり、反対方向に──もう交わることはない。 もう、戻れ(ら)ない。それは決意のようでいて、悲しい諦めでもある。わたしは、空の美しさを知ってしまった。

11/4/2022, 1:47:56 PM