たかなめんたい

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『何気ないふり』 

私は普段、ずっと息苦しさを感じている。
どれだけ寝ても朝に起きることは出来ないし、自分の思うように言葉が出ない。本当はこうしたかった、ああしたかったとか、たらればばかりが頭をよぎる。こんなどうしようもない私を無視して世界は粛々とまわっていく。 

当然だ。
自分の良くない所や嫌いで治したい所から目をそむけて、あの人のここが悪いとか、この人はあそこが駄目だとか、偉そうな顔して内心で文句を垂れている。その度に、誰が物を言っているのだと気持ち悪さを覚える。 

そのこみ上げてくる気持ち悪さを胃の奥に無理やり飲み込みながら、私は今日もまた、何事もなかったかのように「何気ないふり」をして玄関の扉を開ける。いや、開けているつもりになっているだけかもしれない。道行く人々の目には、この薄皮一枚で取り繕った平静などとうに見透かされていて、ひどく滑稽で哀れな見栄っ張りに映っているのではないだろうか。 

街角のショーウィンドウにふと映る自分の無表情を見るたび、その中身の空っぽさに足がすくむような思いがする。いつからこんな風に、自分の醜い本性をひた隠しにして、ただその場をやり過ごすための術ばかりが上手くなってしまったのだろう。 

本当は、誰かにこの息苦しさを見破ってほしい、泥水のように濁った自意識を丸ごと笑い飛ばしてほしいと、心のどこかで願っている自分がいるような気もする。けれど、いざ誰かがほんの少しでも踏み込んできそうになると、私はひどく怯え、反射的にさらに分厚い「何気ない」仮面を被って、のらりくらりと躱してしまうのだ。 

結局のところ、私は深く傷つくのが怖いだけなのだと思う。他者を内心で見下すことでしか自我を保てず、そのくせ誰からも嫌われたくないと震えている。そんな醜い矛盾を抱えたまま、それでも明日にはまた、どうしようもなく薄ら笑いを浮かべて日常に溶け込もうとするのだろう。 

沈んでいく夕日を眺めながら、そんな不器用にしか息を吸えない自分が、今はただ、途方もなく疎ましい気がしている。 

3/31/2026, 7:44:54 AM