たぬたぬちゃがま

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「あぁああああ……」
割れるように頭が痛い。台風が近いからだろうか。雨が叩きつけるように降っているからだろうか。ともかく、頭の中で小人がエッホエッホとツルハシを振るっている。唸るような声を出して痛みを和らげるしかなかった。
「貞子だか呪怨だか着信アリだか零だかで聞いた声がする」
「……ホラーのチョイス古い……」
彼は隣に座るとペットボトルを差し出してきた。ありがたい、これで薬が飲める。
ぷるぷると震える手で頭痛薬を飲み、こめかみを抑える。はやく効いてほしい。
「雨の日はいつも頭抱えてるな」
「頭痛で天気予報できるよ」
頭の中の小人はまだ元気にツルハシを振るっている。眉間を押さえてなんとか痛みを逃す。
ふと、額に冷たさを感じた。目を開けると、彼が額に手を当てていた。
「少しはマシか?」
ひんやりとした温度は、暴れん坊の小人を少し大人しくさせる。
私は問いに答えずにもう一度目をつむり冷たさを堪能した。



【雨と君】

9/8/2025, 9:15:16 AM