ずい

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『神様へ』

魔王が倒されてから数日が経った。
何度も勇者がきては王を倒し、数日後や数十年後に再び魔王が生まれる世界に生まれた魔族の子。それが私だった。

数日とはいえ、魔界に身を潜めるまでは道を歩くだけで人族に石を投げられた。卵、枝、石、ひどい時には武器を使ってくる者もいた。
生まれ落ちてまだ数十年、見た目は八年も経っていないように見えるはずにも関わらずだ。
その外見にいち早く絆された者がいた。

「大丈夫かい?」
それは、王を倒した若き勇者だった。

彼は私を抱き上げると、戸惑い騒ぐ人族たちに背を向けた。下から見上げる顔はひどく穏やかで後光が差して見えた。とっくの昔に見限った神様が降臨されたのだろうか。そのくらい彼の胸の中は温かく感じた。

国に反逆者だと追放され仲間には見放された神様へ。
どうか、あなたの穏やかな御心が汚されることがありませんように。

そんな私の祈りもむなしく時は過ぎた。
かつての勇者は優しき心を魔に蝕まれ、その姿を醜く変えて、次代の魔王として君臨した。

4/14/2024, 1:41:26 PM