導(しるべ)

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「ねぇ、海に行きませんか?」
ある昼下がり、蝉が煩く鳴いていた。
「海、って…また急ですねぇ……導くん」
「だって、あついじゃないですか。夏と言えば海だし」
さぞ当たり前のことのように言うものだから参ってしまう。
これでもだいぶ慣れてきたほうではあるのだが。
「行っても良いですが、今日はちょっと用事があって明日の朝頃まで私居ないので……」
そう言うと、あからさまに抗議の言葉を言いたそうな彼がいつの間にかソファの隣に座っていた。
「じゃあ、いつなら行けます?」
まるで子供のような聞き方にくくく、喉を鳴らして笑う。
「じゃあ、こうしましょう!」
私が言うと、彼は「なんですか?早く教えてくださいよ」と急かすように言う。
「明日、もし晴れたら。晴れたら、ふたりで海に行きましょうか!」

8/1/2024, 11:16:48 AM