緋衣草

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鏡の中の自分 (11.4)

「なんか、老けたね」
中学からの親友に放たれた弾丸の跡をまた確認してしまう。リフレイン、リフレイン。頭のてっぺんから首までじろじろと向けられた視線は連続有効打撃。
 
 そりゃあ、私だって、歳は感じてましたとも。
鏡に鼻がくっつきそうなほど近づいて睨む。学生時代の日焼けがたたって、肌にコーヒーをこぼしたように痣が点々としている。
 シミだって、そりゃあるでしょうよ。
でも、とひとりごちながらため息をついたら、ふぁっと白く曇る顔。メイクで隠していたし、あの日も『割といい感じ』の出来だったのに。
「『鏡は本当のあなたを映していない』??」
それがネットでヒットした原因だった。どうも長い間使っている鏡は傷やら汚れやらついて、本当の自分を映していないらしい。あとは、自分の色眼鏡。
「変えるったって、洗面とくっついてるからね」
数秒悩んで、諦めた。
 毎朝鏡を見たら、ちょっとかわいい自分が迎えてくれるってよくない?
そういうことにした。

11/4/2023, 10:23:24 AM