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彼を一目見た時から目が離せなかった。胸の高鳴りなんてない。
ただそれ以降も目で追ってしまっていた。動くものをふっと追うようなもの。恋というほどのものでもない。

彼とはよく目があっていた。その度に自分が目で追っていたことに気付き、気まずくなって目を逸らした。

だから、大人になって再会し、
「あの頃、よく目があったよね」

懐かしそう目を細めながら彼がそう言ったとき
血の気がさっと引いた。
自分の中の罪悪感が僕を非難し、視線を落とした。ぬるくなった手元のコーヒーに力がこもる。

「なんか俺、お前のこと目で追っちゃってたかも」

照れくさそうに彼が笑ったとき、一瞬何を言われたかわからなかった。

「え……?」思わず顔を上げた。

                     (テーマ:初恋の日)

5/7/2024, 11:48:56 PM