シオン

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「……この世界には、動物とかはいないんですか?」
 今日はこの世界での文学でもさらっておきましょう、と書庫でとんでもないことを言ってのけたウィルにこの世界で伝わる一般的な物語をいくつか紹介されてたサルサは四つ目の物語が終わったタイミングでそう聞いた。ウィルは若干困ったような顔で口を開く。
「……我々も動物ですよ。デウス様は……ちょっと判断難しいかもしれませんが」
「…………違くて、その、人型以外の動物は」
「……あぁ。いないというと違うんですけど、貴方にとってはいないも同然と言いますか……」
 サルサが首を傾げた様子を見てウィルは苦笑いした後に『昼ごはんを食べたあとに紹介しますよ』と呟いた。

 昼ごはんを終えた後、食堂を出たサルサは恐る恐る口を開いた。
「…………その、朝言ってた」
「大丈夫です、覚えてますよ。それに、食堂から近いので」
 そう言って微笑むと食堂の隣の部屋の扉を開いた。
「ここですから」
「……ここ?」
 そっと中に足を踏み入れば、二人の足元の方で歩いている何かを見つけた。
 それは十〜十五センチくらいのサイズのくまやら兎やらであった。しかし、人間界と違って二足歩行をしている上に、ふわふわとした見た目をしていた。簡単に言えばぬいぐるみだった。
「…………ぬい、ぐるみ……?」
「そうですね。ぬいぐるみとも言います」
「……なんで、動いて…………?」
「ココロが宿ってるんです。なんで、と言われても何とも言えませんけど」
 ウィルは微笑んだ。サルサが手を差し伸べると嬉しそうに擦り寄ってくるふわふわした感触が彼の手に伝わった。
「……可愛いね」
「ウン」
「…………え?」
 甲高い声で返事が返ってきたことにサルサが驚いた顔をしたが相手は首をかしげた。
「ドウシタノ? ツラクナッチャッタ?」
「…………ううん、平気……」
「ヨカッタ! ナンカヤッチャッタカトオモッタ」
 目を見開いてウィルの方を見つめれば、ウィルは柔らかく微笑んで言った。
「ココロが、ありますから」

2/12/2025, 4:51:24 AM