時を告げる (9.6)
————って言ったら、あいつ本当に走りに行ってさ」
くっくっと震える喉が見えるような笑い声。ぴったりとスマホを耳にくっつけて楽しそうな君の声を聞く。まるで君が隣にいるように耳が真っ赤になってしまうのだから困る。ニヤニヤしすぎて奥歯のあたりが引き攣ってきた。
「で、戻ってきたら案の定顔真っ赤でゼェゼェ息して…って聞いてるか?寝てねぇよな?」
「大丈夫。この状況が幸せすぎて録音しようか考えてた。」
ふにゃっとした顔を自分でつまんで真面目に答える。
「黒歴史確定じゃん絶対やめろよ。」
今度は思わずケラケラと笑ってしまった。あーあ。かわいい笑い声とかしーらない。
ふっと向こう側が静かになる。急にひんやりとした風が吹いた気がした。
「時間だな。」
「…うん。」
決めているわけでもなく、ただ寂しい風が時を告げる。甘くてくすぐったくてあったかい、柔らかな時間はひんやりする夜には耐えられないみたいだ。
私たちはもったいつけてゆっくり息を吸う。
「「おやすみ。」」
9/6/2023, 11:44:06 AM