#17 遠くの空へ涼しげにせせらぐ夏の川辺で、やわらかな明かりの灯った直方体を、押し出すように夜空へ送り出した。彼は星になったわけではない。空に帰ったわけでもない。もうどこにもいないことは分かっているけど、この燈會は、そんなどこにもいないはずの彼に必ず届くと思った。小さくなっていく橙を見つめながら、例年通り、確信した。さあ、行ってくれ。より高く、遠くの空へ。
4/13/2023, 7:47:30 AM