なにか根拠があるわけでは無いけれど。
なにか理由があるわけでもないのだけれど。
この手を離してしまえば最後、もう貴方の笑顔をこうして見ることは出来ないのだと。私はそれを知っていた。
微かに伝わる温もり。手放す勇気のない私。
僅かな吐息が木霊する2人きりの小さな世界で、私は言葉を必死に探す。
これから背を向けて前に進む貴方に何を言ったらいいのか。これから見つける私の言葉は、貴方にとって、はなむけの言葉となって貴方の背中を押せるのか、呪いとなって貴方にしがみついてしまうのか。
刹那、視線がかちあう。穏やかでいて優しい色をしたその瞳は、いつもの貴方で。溢れ出す想いがそのまま口から零れてしまうのだ。
“ さよならは言わないで”
きっと、いつかまた。
12/3/2022, 11:54:37 AM