回りは闇でも真っ暗ではなく点々とした淡い光が空を彩る。波の音が辺りを支配し自分の足音は聞こえない。
「何してんの?入水は辞めた方がいいよ」
「酷いなー。僕は歩いているだけでそんな事思われるの?」
辛辣な同居人の言葉に思わずそう返してしまった。
歳も近い同居人はゆっくり僕に近付いて来た。
問を返す訳でも何をしてくる訳でもなく同居人は僕の横に並び歩幅を合わせた。
「と言うか…君そこなんでここに居るの?速く戻りなよ。あの人に気付かれたらうるさいよ?」
「それは同じだろ?」
あの人と言うのはは僕らのもう一人の同居人の一人のことだ。僕の中ではうるさい目覚まし笛さんと呼んで居る。
「僕はバレないから」
「なら、俺もバレない」
「…」
いつも何を考えているのかわからない顔が更にわからなくなった。
何故そんなに自信満々に言えるのか…。
「まあ、いいか」
「そうそう」
それから二人でフラフラと夜の散歩を始めた。
しばらくして同居人が口を開いた。
「おまえは──────」
同居人の声が夜風と波の音に遮られた。
「ごめん、なんて言った?」
「…別に」
「そっか…そろそろ戻るとするか」
「うん」
僕達は家に戻る道のりを戻った。
夜の音が僕らを包みながらさっきよりも速く退いた
…………………………………………………
おまえは、目を離すと何処かに行きそうだから
こんな事言ったっておまえは行くだろう?
今はいいよ。
その時が来ても嫌と言っても離してなかやらないから。
俺がおまえを引き止めるから。
空は曇天の星
8/15/2023, 10:57:46 AM