「父さんと母さんをいきなりそう呼べって言われても難しいと思うけど、俺のことは今日から兄ちゃんって呼ぶんだぞ」 突然義兄になった3つ年上の親戚は俺が新しい家に着いて早々にそう決めつけた。失ったものの大きさに心が追い付かない俺は、動かない頭でただその通りになぞる。「にいちゃん?」「うん」「…にいちゃん」「ん」 当時のことはもうほとんど覚えていないのに、その満足そうな顔も、そっと握られた手も、涙声の返事も、何故だか今も鮮明に覚えている。
9/29/2025, 12:42:07 PM