自販機の前で何を買おうか指を迷わせていると後ろから伸びる指がボタンを押す。がこん、という耳障りな音とともに落ちてくる飲み物は「コーラ」ため息をついてコーラを後ろ手に渡す「さんきゅ」もう一度小銭をじゃらじゃらとかき混ぜ、投入口に突っ込む「最近研究室来てないな」「あー、うん。訓練室篭りきりよ」後ろで炭酸の抜ける音がする。毎度毎度同じ飲み物を美味しそうに飲んでいるが飽きないのだろうか「え、何、もしかして新作作ってる?」「そんな楽しい仕事じゃない。遠征艇のシミュレーション」ついて出たため息に「うわ、つまんなそう」と声が重なる。どれを買うか、また指が迷い始める「雷蔵が担当してる人型ネイバー、どうなの」「いい奴だよ、楽しいし」がこん、と音がして結局同じ飲み物を手に入れる。今が何時で、どうして雷蔵がラウンジにいるのかも知らないが、まだ仕事が山ほど残っていることだけは確か。じゃあとその場を離れた後ろから名前を呼ばれ振り返る「どうせ仕事おわんないんでしょ。うちきなよ」思考は停止しているので、意味がわからなかったが雷蔵の後ろをついて歩けば彼のラボに案内される「久しぶりだ〜」例のネイバーはというと、今は起動停止しているようでオブジェクトのようになっている。適当に座れば「いっつもそこ、座るよね」「そうだっけ?」「どうする、寝る?」彼の個人ラボには簡易ベッドがある、何度もお世話になっているそのスペースに視線を動かす。仕事終わってないんだよ、と頭は言っているが体は限界だ「仕事…」「はあ…とりあえず寝な」なんでため息をつかれたのか、いつもなら悪態をつくところだが、脳はしんでいる。促されるままベッドに吸い込まれ、沈む体と意識の向こうで雷蔵にお礼を言っておく「俺が見てないと全然だめじゃん。そばに置いておくから」遠くの方に聞こえたセリフが夢じゃなかったと気づくのは、また明日の話。
これからも、ずっと
4/9/2024, 4:49:01 AM