彼女との出会いは、大学のワンダーフォーゲル部だった。大学時代は勉学よりワンダーフォーゲルに明け暮れていた。
そんな登山の2日目の朝はいつも、山の頂から差し込む光に、思わず僕たちは息をのんだものだった。
生まれたての朝日が、東の空から世界を金色に染め上げ輝いていて、すべてが眩しく、世界も未来も何もかもが僕たちのものかと思えた。
あのとき、僕たちは20歳で高鳴る恋をしてた。
でも社会に出た僕たちは、もう20歳ではない。
世界が自分たちだけで回っていないことを知ってしまった。金色の光だけでは語れない、複雑な現実も見えてくる。日々の中で次第に、かつての輝きが薄れていく。
心を洗いたくなって、僕は彼女を山登りに誘った。
また朝日を見に行こう。
二人で見た東の空の日の出は、あの頃と同じくやはり心を打つ美しさだった。
そして、ふと西の空に目をやると、ぼんやりと白く月が浮かんでいる。月を見て、なんだか忘れかけていた恋心を静かに思い出した。
僕たちは、東も西も同じ方向を見つめ、これからのことも信じてみようと思った。
「Sunrise 」
5/21/2025, 11:38:13 PM