「bye bye...」
***
東京で学生時代の友人の結婚式があった。ススキ花火の弾ける火花の如く賑やかな時間を過ごした。
1人関西の田舎に出てきて泥のような日々を送っている私と違い、着実に人生を進めている2人は輝かしく見えると同時に、異世界の珍奇な生命体の様にさえ感じた。それほどに、今の自分の生活とは無縁な奇怪さを感じざるを得なかった。ただ、その場にいる間は、私も異世界の生命体の一員になり、身体の内側から滴る泥溜まりに足を取られまいと必死になりながら蜂のようにダンスを踊った。何食わぬ顔で、懐かしい友人と笑い合う姿は我ながら道化そのものだった。友人と別れ1人になると、私は顔にへばりついた羽虫を払うように仮面を脱ぎ捨てて、再び泥の世界に戻った。昔の自分はもういない。私にとって過去の自分はもはや、自分の言葉をあえて使うなら異世界の生命体であり、心地の良いものではなくなっていた。
「次は名古屋、名古屋...」
車内アナウンスで我に返る。ふと窓を見ると目が合った。これは私だろうか。それとも仮面を被った道化か。いずれにしても、今は1人になりたかった。こちらが手を振ると、あちらも手を振り、ふっと微笑み返してきた。
3/23/2025, 4:55:47 AM