ゆう壱

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#月に願いを
「明日が上弦の月か」
夜空を見上げて、満月になるまで遠いなと独り言を呟く。日没が遅くなり夜に虫の声が聞こえれば、夏が来るんだとすぐにわかる。
メイドも執事ももう寝静まっているのかとても静かだ。しかし城下の町を見ればまだ煌々と明るい酒場が点々とある。

「神様、月に住まわれる女神様」
月に向かって手を組み、祈りを捧げる。
「昨年は冷夏であり、十分な作物を取ることができませんでした。どうか今年こそは、良い夏をお恵みくださいませ……」
組んだ手を強く握り、女神様に届くように何度も何度も祈る。
今年こそは、民が憂いなく過ごせますように。

5/27/2023, 1:41:57 AM