案山子のあぶく

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◎輝き
#47

しゃらしゃらチカチカと眩いばかりの宝物を背負った巨大なヤシガニ──タマトアはご機嫌に歌いながら体を揺らした。
すると、光に釣られた魚が自ら彼の口目掛けて飛び込んできた。
それを咀嚼し呑み込むと満足そうに笑ってステップを刻む。

「ほんっとタダ飯は最高だぜ♪」

甲羅の中心部には人間からすれば大きい、彼からすれば小さな釣り針がちょこんとすえられている。
彼の機嫌をいつになく良くしているのはまさにその魔法の釣り針だ。
タマトアにとっては他の宝物のなによりも輝いて見える特別なものだ。
それをちらりと一瞥して更に気をよくしたタマトアは自身の鋏を頭上に掲げ、海の更に向こうを見透かすように目を細めた。

「マウイ、お前の自慢の釣り針は俺のコレクションになっちまったぜ♪まさかお前がくたばってるわけがねぇよなあ?ほら♪取りに来い、来い、来い♪」

地を這うような歌声と笑い声はどんどん大きくなっていく。
日夜縄張り争いを仕掛けてくるライバルたちも小物たちもタマトアの機嫌を損ねることを恐れて今は大人しくしている。

しばらくの間ラロタイにはタマトアの声が響き渡ったという。
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モアナと伝説の海より タマトア

[駄弁&蛇足]
タマトアってマウイにけっこう重めの歪んだ感情向けてる気がするんですよね。
モアナ2を観てからモアナ沼にズブズブ浸かっていたところにこのお題がきたものだから思わず書いてしまったわけです。
(布教もどき)

2/18/2025, 9:58:43 AM