子猫
パァン
引き裂くような銃声が部屋に響く。弾丸は私のすぐ真横の壁に埋まっていた。弾丸が掠ったのか右頬からたらりと血が流れる。
「ほら、てめぇが俺を選ばねぇからこうなったんだ」
引き金を引いた男はふっと銃から出た煙を吹くと今度は銃口を私の額へと当てた。それだけで私の体感温度はマイナス10度。体は震え上がりガチガチと歯を鳴らすことしか出来ない。
「震えてるな。寒いのか?」
男は恐怖で震える私を勘違いしたのか右頬の傷をひと舐めする。ヒリヒリと痛むのか、男の行動にさらに恐怖したのか私の目から涙が溢れ出した。
「おね、お願いです…!かえ、って。わ、わた、しの家から、出てって…!」
「はぁ?てめぇの家はもうここじゃねぇよ。今日からは、俺と一緒に海がきれーなところに住むんだ」
額に銃口をグリグリと当てる。それは抵抗するなと言っているようだった。いや、そのつもりだろう。
「うっうぅぅぅ……いや……うぅぅ……」
涙と鼻水だらけの私をさらに追い打ちをかけるかのように男は目元をべろべろと舐め回す。涙で顔は分からないが、たしかに嬉しそうに舐めていた。
「なぁ、俺と一緒に幸せになろうぜ」
かちゃり、銃の安全装置が外された。
私が拒めば男は即座に撃ってくるだろう。
「う、うぅっ…」
返事の代わりに私は頷いた。頷いて、しまった。
「!!本当か!本当に来てくれるんだな!?」
男は問いかけるようにこちらに話してくるがもう私の否定の声など届かない。男は銃から手を離し私の首に首輪をつけ手首には手錠をかける。
「あぁ…!漸く俺の物になった!!俺だけの、俺だけの……!!」
俺だけの“キティ”!!
11/15/2024, 2:41:47 PM