たろ

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※閲覧注意※
悪者系モブが出てきます。
胸糞悪い事をしやがります。
良い子は真似しちゃダメだよ。


【今日にさよなら】


「何しやがってんすか、アンタ。」
あなたの地を這うような声を、初めて聴いた。

気色悪い本性を見られてしまった。
「自分で呼んだのか?色気付きやがって。」
一気に血の気が引く。眼の前が真っ暗になった気がした。
「…ケイ兄。隣ん家、今すぐ来て。知らんオッサンが隣ん家の子の上に乗っかってんだけど。」
見られたくなくて体を縮めたいのに、全く動かない。
「最悪…。マジで、やって良い?」
冷たく見下す瞳が、とても恐ろしかった。
(…終った。)
軽蔑や侮蔑を宿した眼が、こちらを見ている。
「早くしないと、我慢できない。」
楽しそうに笑う男の声が、酷く遠い。
「お前がお前なら、そのお友達も同類か!」
気持ちが悪い、行為自体が穢らわしい。
「クソビッチが!」
なのに、躰は悦んでいるのだと、この男は言っていた。
「…オッサンの目って、見えてないの?」
瞳孔が開いたままの、爛々とした眼。
嬉々として開く唇には、毒々しい言葉が乗っていた。
「はい、そこまで!全員、動かないで!」
ぜぇはぁと息を切らした若い男が、飛び込んできた。
「だあぁ!動かないで、つってるでしょ!お兄さん!」
全員お兄さんじゃん!とか言いながら、若い男は瞳孔が開いたままの少年と男性の間に、体を滑り込ませた。
「はい、未成年者暴行で現行ね。取り敢えず、このままじっとしてて下さい。」

どやどやと人の気配が複数近付いてきて、入れ代わり立ち代わり、近付いては遠ざかって行く。


「ごめんね、かっちゃん。気付くのも、助けるのも遅くなっちゃった。」
茫然と天井を見上げたまま、動かない自分を抱き締める温もり。
「…無理、しなくて、いいから。」
震える唇で、ごめんと呟いた。
「無理してないよ。体、綺麗にしよ。」
力強い腕が自分の体を抱き上げた。

頭から足の先まで、丁寧に洗ってくれる手が優しくて、空っぽの心が泣き出した。
「今日のことは、全部忘れて良いから。かっちゃんが覚えてたり、嫌な思いする必要なんか、何処にも無いんだから。」
体を湯船に漬けてくれて、ずっと傍に居て見守ってくれるあなたが、とても優しくて苦しい。



『あの日の今日に、さよならを。』

2/18/2024, 10:12:54 AM