魅夜

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二人ぼっち

俺は二人以上で居る事が嫌いだ
それは、二人以上…例えば三人としよう
二人が話しているとき俺は独りだからだ
けれど、二人の時はどうだろう
確かにあまり親しく無い者と二人きりになると気まずいかもしれないが
親しい友人とは二人きりの方が心地がいい
俺はそんな事をぼんやりと考えながら古い型のライターで咥えた煙草に火をつけた
「ふぅー……」
吐き出した紫煙は夜の闇へと溶けていった
「…嗚呼、昔が懐かしい」


ー過去ー
「こっちに来て遊ぼう!」
「、僕の事かい?」
「そうだよ?他に誰が居るってのさ」
「…」
周りには誰も居ない、今この場所に居るのは
「そうだね、今この場所には僕とキミしか居なかったね」
そう言い放ち俺はわざとらしく周りをきょろきょろと見回してみる
「本ばかり読んでいてつまらなくないの?」
「…」
そう言われた瞬間俺はムッとした
「嗚呼、無論だ詰らなかったら読んでいないよ」
「それもそうだねぇ」
「そう云うキミこそさっきから1人で遊んでいて楽しいのか?」
「うーん、分かんない」
「何だそれは…」
よく分からない、此奴の思考回路が
「まぁ、何であれお断りさせて貰うよ」
「えー、何でぇー?」
「御生憎様体を動かすよりも本を読んでいたいんでね」
物好きな事だ俺なんかを遊びに差そうなんて
「むぅ」
「膨れっ面をしても無駄だよ」
「ちぇ」
と、拗ねながら何故か俺の隣に腰を降ろした
「何をしているんだ」
「隣に座った」
益々此奴の考えが分からない
「はぁ…」
俺は諦めて本の続きを読むことにした
「…」
読書に熱中していると日が暮れていた
「…もう、こんな時間か」
ふと、視線のを横にやると
「すー、すー」
先刻までそわそわしていたかと思ったら
何ともまぁ、間抜けな寝顔で寝ている
「寝てる…」
「よくもまぁ、初対面の肩で気持ち良さそうに眠れるな」
帰ろうかと思い起こそうとする、
「…(すげえ隈、家で眠れて無ぇのか?)」
「いや、だからといって俺には関係の無いことだな。」
もう、半分以上沈みかけている夕日が二人ぼっちの俺らをうつす
「おい、起きろ」
「ん、あれ、もしかして寝てた?」
「あぁ、ぐっすりとな」
「そっか」…………



ー現在ー
「…今考えると名前聞いて無かったな」
後悔はしていないけれど、
「二人ぼっちのあの時間は楽しかったな」
あの時初めて人と話すのが二人ぼっちが悪くは無いと思えた
「さて、そろそろ戻るか」
夜の冷たい空気が頬を撫でる
「また、会うことがあったらあの時みたいに話せると良いな」
二人ぼっちの空間で
「綺麗な月だな…」
そんな事を思いながら煙草を灰皿に押し付けて部屋に戻った

3/21/2023, 1:58:55 PM