「おはよう!」
彼女は毎日笑って話しかけてくれる。
僕はそれにドキドキしながら言葉を返す。ばれないように、冷静な振りをして。
「うん、おはよう。」
「ねぇねぇ課題やった? 私はバッチリだよ!」
「珍しいね。いつもは忘れるのに。」
「う、今日はしっかりやったもん。」
「どうせ、徹夜だろ。」
「バレたか。」
そんな他愛もない会話が続くこの瞬間が一番好きだ。
でも、長くは続かない。だって僕は───
「あ、来た!」
そう彼女には彼氏がいる。僕ではない恋人。
僕は彼女にとってただの友人。有象無象の一人に過ぎない。いつもあの男に向ける花のような笑顔を見ると、
彼女もあの男も途端に憎らしくなる。だけど。
「じゃあね、また後で!」
だけど、僕に笑いかけてくれるその度に。嫌いなんて
感情はなくなってしまう。もっと好きになってしまう。
「いっそ君を嫌いになれたらいいのに。」
呟いた言葉は誰にも届かない。
『好き嫌い』
6/13/2023, 10:07:02 AM