—巣立ちの日—
記憶もないくらい小さい時から、ずっといた私の部屋。
——わたし、これがいい!
小さい頃、ホームセンターで選んだ勉強机。
宿題をする時も、受験の時も、とてもお世話になった机。
昔は大きすぎて、地面に足がつかなかった。
部屋の角にはベッドがある。
友達の家で寝ても、ホテルで寝ても、結局このベッドが一番寝心地が良いし、安心する。
嫌なことがあった日は、枕に顔を押し付けて、声を殺して泣いた。
壁に立てかけた全身がみえる鏡。
デートの前も、就活の日も、何度も前髪を直して、この鏡から自分を睨んでいたっけ。
「あんた、準備できたの?」
下の階から母の大きな声が聞こえる。
「うん、すぐ行く!」
今日でこの部屋とはお別れだ。
机をそっと撫でる。
ベッドのシーツを整える。
鏡に映った最後の私は、昔よりもずっと大きくなっている。
「いってきます」
私は部屋を出て、静かにドアを閉めた。
お題:この場所で
2/12/2026, 7:57:40 AM