とある恋人たちの日常。

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 家でひとりになりたい時ってありません?
 俺はある。
 
 あ、違う。あった、だ。
 
 前は気軽にひとりの時間を作れたんだけれど、今は恋人と同棲をしたから、家でひとりの時間を作るのは難しくなった。
 
 心がすさんでいる時や、嫌な気持ちでいっぱいになった時なんかは正にそれ。
 もちろん外でひとりの時間を作ればいいんだけれどさ、そうじゃないんだよね。
 
 俺は彼女にそれを伝えたことがあるんだけれど、彼女は俺をひとりにはしてくれなかった。
 
 それは物理的に。
 
 俺がひとりになりたくて部屋で寝転がっていると、彼女は背中合わせに横になる。何も言わずにそばにいてくれた。
 
 俺から声をかけるまで、俺に声をかけてこなかった。
 
 でも背中から彼女の体温が伝わって。それが〝ひとりじゃないよ〟と言ってくれるようで。
 
 胸が熱くなった。
 
 そうやって、ひとりじゃないけれど〝ひとりの時間〟が持てるようになったんだ。
 
 もちろん、それでも収まらない時だってある。
 でも時間が消化してくれるんだ。ただ、その時間がどんどん短くなっていっただけ。
 
 気がつくと、ひとりの時間が欲しい時は静かに彼女を抱っこさせてもらうようになった。
 それで落ち着くようにどんどん変わっていったんだ。
 
 これって愛だと思わない?
 
 
 
おわり
 
 
 
四三三、True Love

7/23/2025, 11:18:10 AM