会いたい
会いたいのに会えない
僕は遠くに住む彼女へ向けた封筒をポストに入れた。
空を見上げる。今日は曇り空。
何だか僕の彼女に会えない気持ちを表しているようだな、と思う。
彼女は同い年だけど、携帯を持っていない。
だから僕は彼女から来る手紙で彼女の様子を知るしかない。
彼女に会える夏休みまで長く感じる。
転校してきた学校にも慣れたし、友達も出来たけど、ここには彼女がいない。
彼女がいない学校生活は、本当に彩りを欠いていて。
僕は彼女に会いたくてたまらない。
ポストの前で佇んでると、不意に携帯の着信音が鳴る。
見ると、彼女の自宅からだ。
慌てて、応答ボタンを押す。
「もしもし?ルナ?」
「あー、カケル?さっきポストに手紙出したの。そしたら、カケルの声が聞きたくなって」
ルナの言葉に僕は驚いた。
「あれ?ルナへの返事まだなのに、手紙くれたの?嬉しいけど。僕も、今ちょうどポストに手紙入れた所だよ」
「そうなの?凄い偶然!私、この間バドミントンの試合行ったんだけど、その時に可愛いペアお守りみたいなのがあったから、カケルとお揃いで買ったんだ。どーしても送りたくて!」
ルナの嬉しそうな声を聞けて、僕も顔が緩んでしまう。
「そっか、バドミントンの試合、どうだった?ペアお守り嬉しいよ。ルナだと思って大事にするね」
「えっ、私だと思って・・・うん、嬉しい・・・私ももう片方をカケルだと思って大切にする!試合ね、準優勝までいったんだ!褒めて♪」
「おっ、凄いじゃん!頑張ったな、ルナ、偉いよ。ここにいたら頭を撫でてあげられるんだけど」
僕がルナの側にいられないことを残念に思っていると、ルナは少し声のトーンを落として言った。
「会いたいな・・・会いたいのに会えないね」
「そうだね、僕も毎日ルナに会いたいよ・・・」
僕の声のトーンも下がる。
二人でふうっと電話越しで同時にため息をつく。
それに気付いて、二人で思わず笑ってしまった。
「落ち込んでてもしょーがない。夏休みまで、あと一ヶ月だよね」
ルナが元気づけるように明るい声で話す。
「そうだな、その日を楽しみに毎日過ごすよ!」
僕も、できるだけ明るい声で応答した。
だけど、今日はいい日だ。
なんたって、大好きなルナの声が聞けたんだから。
「また・・・ね、大好きだよ、カケル」
「僕も、大好きだよ、電話ありがとう」
そう言って、切るのを惜しく思いながらも、別れの時は来てしまう。
会いたい人。
遠くにいる人。
今日も明日もルナのことを思いながら、僕は再会の日を毎日夢見ている。
1/19/2024, 5:51:40 PM