もんぷ

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まだ知らない世界

 駅の西口から出てすぐのところには遊具もあまりない公園と小さなスーパーぐらいしかなく、大きいコンビニや商業施設が近い東口よりも人通りが本当に少ない。家が西口側にある自分にとってはありがたく、電灯がポツポツと灯る帰り道を一人歩いていた。しんとした夜の空気を味わいながら歩いていると、暗闇で目立つ自動販売機の前で学ランを着た少年が佇んでいた。暗い中自動販売機の灯りを頼りに携帯を取り出して前髪を気にするようなそのいじらしさが残業で疲れた体に沁みた。塾帰りの彼女でも待っているのだろうか、付き合いたてなのかな、なんて妄想が膨らむ。遠目にそれを見ながら歩いていた時、自分の後ろから走ってきたサラリーマンがその子に声をかけて共に歩き出した。お、お父さん…?!自分が予想していたかわいらしい中学生女子は現れず、全く違った人が現れたのを見て、自分の想像力の無さをつきつけられた。思春期男子が夜中にお父さんと約束して帰るなんてことはありえるのだろうか、お父さんと会うだけなのに前髪って整えるのだろうか、その子がただナルシストっぽい感じだっただけなのか…?まだ知らない世界が広がっていることを実感した。

5/17/2025, 2:25:24 PM