もも

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『みかん』
「何で俺の家にいるの?りっぱな我が家あるじゃん」
六畳一間のワンルームのメンバーの家、俺に向かって物語担当のメンバーが不満げに炬燵の中で足を蹴ってくる。
大学に入って自分達が何か表現出来るんじゃないかって集めたグループは、いつの間にか遊びから本気に変わってた。
俺の目が良かったのか、ただ単に皆が凄かったのか、冗談半分で『癒しを届けよーぜ』なんて俺が言った言葉を皆が動画、音楽、イラスト、物語で形にしてくれて、いっつもまず俺が癒されるのはどんな事があっても絶対内緒。
そんなあいつらの為に俺が出来ることなんてたかがしれてて、ただ人の輪を作ってこいつらは凄いんだよーって伝える事ぐらいしかできない。

「いやー…。炬燵置けないからお前んち本当好きなんだわ。
他のメンバーも炬燵置いてないし、みかんもないしー」

「いや、せまいじゃん。二人で炬燵なんてしてたら結構いっぱいいっぱいだぞ。
みかんて…そんなの実家から送られてくるもんだし俺は珍しくも無いんだけど。
てか、減らしてくれるからありがたい。」

もうすぐ新しい年がくる。ただ広い部屋で一人詰まんない時間を過ごすくらいなら、狭い部屋こいつと炬燵を囲んで過ごすこの時間の方が遥かに楽しい。

「じゃああいつらも呼ぼー!ほら、みかん凄いへる!」
「いや、それは狭いだろ…!お前んちと俺んちは違うの」
「ちぇー」

みかんの消費が困ってるみたいだから、残りのメンバーも呼ぼうとしたら怒られた。
しょうがない、今日は二人で明日また俺んちで鍋パーティーでもしよう。
グループに鍋パしよ!物語担当がみかんに困ってるらしい!
と打ち込みながら、まだまだこいつらと楽しい時間が過ごせるのが嬉しい。

大学を卒業したら俺は家を継ぐために動かなきゃならない。
もうばか騒ぎも出来ないだろうし、自由もなくなるだろう
だから、今自由にうごける内にこいつらは凄いんだ!ってできるだけ伝えたいんだ

『いくー』
『参加。』
『みかん!やったー』

なんて残りのメンバーの連絡を口許を緩め見ながら俺は炬燵の上にあるみかんを一足先に頂くのだった。

12/29/2023, 11:53:04 AM