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「お願いだから、一人にして。」
いつも、そういって彼女は人を遠ざける。
自分の身を守るように、冷たい言葉を他人に浴びせて。
けれど僕は知っている。彼女の瞳が苦しんでいることを。本当は誰かと居たいことを。だって僕は君の幼馴染みなんだから。
「また、ここにいたんだ。」
「何。一人にしてくれる。」
「素直じゃないね。本当は一人が嫌なんだろ?」
「何も知らないくせに!」
「うん、知らない。でも寂しがってるのは顔を見ればわかる。君と何年一緒にいると思ってるのさ。」
「………」
「どうして君は一人になりたがるの。」
「み、皆私を利用するの。勉強が出来るからって教えてもらおうとしてくるの。それは別にいいけど。係の仕事とか押し付けて来て。結局私なんて誰も見てくれない。だから、一人でいたい。」
涙を流しながら震えた声で彼女は言う。
「大丈夫。大丈夫だよ。僕は君のそばにいる。」
「信じていいの?」
「僕が約束破ったことなんてないだろ。それにもうずっと僕らは友達だろ。」
「かっこいいこと言っちゃって。」
どうか君に僕の覚悟が伝わりますように。
そして君がいつか一人になりたいと言わなくなりますように。笑い声を聞きながらそう思った。


『だから、一人でいたい』

8/1/2023, 4:58:13 AM