霜月 朔(創作)

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約束だよ



小さな灯りが灯る部屋で、
君は私を見つめていた。
硝子玉のように、
透明で繊細な君の瞳は、
何処か虚ろだった。

余りに無垢な君が、
生きていくには、
人の心は、醜く、冷酷で、
世の中は、冷たく、醜悪だ。

社会は、傷を持つ者を、
容赦なく切り捨て排除する。
どんなに藻掻いても、
私達に安らげる場所など、
ありはしなかった。

永遠の闇の中から、
君を救いたかった。
差別や侮蔑の刃から、
君を護りたかった。

だが。
君は自分を責め続け、
毎夜、悪夢に魘される。
罅だらけの君の心は、
光さえ拒むようになった。

だから。
君の魂が壊れてしまう前に、
君の望みを叶えよう。
君が永遠を望むなら、
私は君に永遠を誓おう。

君が握る銀の刃が、
私を貫き、君をも貫く。
二人から溢れる赤色は、
ゆっくりと混ざり合い、
お互いを染め上げる。

君が笑顔になれるなら、
君がこれ以上傷付かないなら、
それで、いい。

だから。
これからは、笑っていて欲しい。
…約束だよ。


6/4/2025, 8:46:22 AM