récit

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ピエロの気持ちは、笑われるたびに湿り気を帯びていくようだった。心に雨の気配が忍び寄り、全速力でその場を逃げ出したいと思った。
しかし、湿った空気は重く彼を包み込み、雨の精霊が彼を捕える。彼は前に進むことが出来なかった。
でもやがて、本物の冷たい雨が彼の頬を優しく伝う。ピエロの涙のメイクが静かに流れ落ちて消えていった。
その時、ようやくピエロは仮面を脱ぎ捨て、本気で泣きじゃくった。そして心の底から解放されるように走ることができたんだ。

「雨の香り、涙の跡」

6/19/2025, 11:50:47 PM