書き出しに心を掴まれた。
字が下手なことの何が悪いといって、他の人が読むのに苦労することだ、と叱って罰としてカンタに作文をやらせると滅茶苦茶な字が返ってきた。
頭にきたわたしはビリビリに破こうとしたが、せっかくの原稿用紙が勿体ないからやめた。
それじゃあ、内容も大したことないだろうからと流して読んだら、一読してこりゃすごいと感動してしまった。
「作文をつづけなさい。お前の文章はなにかもってる」
怒鳴りつけるつもりが、それだけ言って、帰らせてしまった。カンタは肩透かしを食ったみたいな顔で俺を見たが、すぐに顔をそらすとそれでもう立ち去った。
照れてやがる、と思った。
中学で国語を教えて二十年、これといったやり甲斐なく経過したが、ここにきてなんだか腕がなりはじめた。
こいつは化けるぞ。
字は好かんが、文章は上手い。
3/25/2024, 3:28:53 PM