かたいなか

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「生物植物系少なめなこのアプリとしては珍しい」
3月からアプリ入れてるが、今まで生物植物ネタっつったら4月17日付近の「桜散る」程度だし。
某所在住物書きはスマホの画面を指で流しながら、過去出題分の題目を確認している。
「どうハナシに組み込もうかねぇ。第一印象としては無難に『あっ、蝶々』だろうが、他は蝶柄の小物とか、『バタフライ』エフェクト?」
モンシロだと思ったら別の蝶だった、なんてのもアリかねぇ。物書きはメモ帳アプリを開き……

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今朝は酷い地震があったようですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。今日は今朝の揺れとモンシロチョウを、ひとつふたつ、テーマにしたおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、ひとに化ける妙技を持つ化け狐の末裔が暮らしていて、その内末っ子の子狐は、星とお花とキレイな物が大好き。
ふかふかお布団にふかふか枕、お気に入りの小さな宝箱と一緒に、今朝もすーすー、寝ておりました。
ところが例の、4時16分。床がトンと跳ねました。

「地震だ、じしんだ!」
夢の中で母狐自慢のおいなりさんを、もう少しでパックリ食べられる筈だった子狐。突然揺れて、起こされて、びっくり。ぐるぐる部屋の中を走り回ります。
「どうしよう!どうするんだっけ?!」
机の下に隠れましょう、頭をひとまず守りましょう。コンコン子狐、いっちょまえに人間の言葉は話せるものの、狐なので、避難訓練の習慣がありません。
揺れがおさまってからもぐるぐるぐる。しばらくの間、子狐は部屋の中を走り回っておりました。

『あら、ご無事?』
子狐の部屋の窓から、1匹のモンシロチョウが、ヒラヒラ入ってきて言いました。
『そんなに走り回っては、落ちてくる物に頭をぶつけるし、きっと転んでしまうわ。落ち着かなきゃ』
ヒラヒラヒラ。モンシロチョウは子狐の、小ちゃなおはなに下りてきて、羽を広げて言いました。
「チョウチョさんが、しゃべってる」
自分のことは棚に上げて、コンコン子狐、白い羽をキラキラおめめで見つめました。

『怖い裂け目に吸い込まれて、別の世界から落ちてきたの。その矢先の地震だから、踏んだり蹴ったりね』
「チョウチョさん、踏んだり蹴ったりしたら、死んじゃうよ。危ないよ」
『そういう意味じゃないの。あなた、さては「蝶よ花よ」なんかも言葉そのまんまで受け取るタイプね。
いいわ。蝶は不死と復活、開放の象徴。少しだけ、あなたを無知の束縛から開放してあげましょう』

まず地震が起きる理由、それから揺れた時に起こり得る事故。なるべく日頃から準備をしておくべき根拠。
私も昔々、とても大きな揺れに巻き込まれてね。
息子はすごく大きくなって、「被災者を一人でも救いたい」って、今救助隊をしているのよ。
父狐が子狐の部屋にやって来て、モンシロチョウを美しい虫かごに入れ、『世界線管理局 密入出・難民保護担当行き』と書かれた黒穴に送り出すまで、
子狐は言葉を話すモンシロチョウから、地震と防災、それから歴史のおはなしを、時折居眠りしながらも、お行儀よく、聞いておりました。

5/11/2023, 12:30:36 AM