織川ゑトウ

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『愚生の生涯(ぐせいのしょうがい)』

秋月が登り始めるこの季節。
ある校舎の裏ではこんな噂が流れていた。

「「満月の夜になると、校舎の中庭に幽霊が出てくるんだって」」

どこにでもある噂。子供時代によくやる遊び。

「「肝試しなど行ってはどうだい」」

そう教場の支配者から言われ、
逆らうこともできない愚生は夜の校舎に訪れていた。
どの時代にも大将などという者は存在するようで。愚生は孤独を感じたな。
さて来てみれば、木製の色味が薄く曖昧になっている校舎。
大分暗く不安になるが、中庭までの道筋なら灯火が無くとも行けるだろう。
そんなことを思いながら、人気のしない少々肌寒さを感じる廊下を進んでいく。

「何か外套でももってくればよかったかな…おや?外套?」

愚生、嫌なことに気がついた。

「嗚呼、外套。教場に置いたままだな」

仕方なく軋む階段を登ってゆく。
きいきいと鳴く床が妙に怪しい雰囲気を纏わせる。
すんすんと鼻を効かせてみれば、今にでも幽霊の冷風が鼻を突き抜けていきそうだ。

「さて、着いたぞ」

もう秋も近しいというのに
何故だか空気がどよんとした教場。今日来るには、まっこと相応しくない。

「いやに寒いな。外套は…あ、あったぞ」

場所を忘れていたので見つからないかと心配したが以外とあっさり見つかった。

「さてこれでも着れば少しは暖かく…」

愚生、気づき肩を震わせた。
なんと驚くことに外套に触れた瞬間、外套の中に人が見えたのだ。
女の顔だった。暗かったためよく見えなかったが、愚生を睨んでいたような。

この事実に、肝が座っていない愚生は回れ右をしてできるだけ急いで教場を後にした。

「嗚呼、何が幽霊だ馬鹿馬鹿しい。そんな者、非科学的だろうに……そんなことより、早く、一刻も早く中庭行って家に帰らねば」

愚生、頭が回らずに呼吸を乱して中庭に飛び出した。

そしてまた、愚生は意表を突かれた。

中庭に出ると、低い校舎の屋根の上で可憐な少女が舞っていたのだ。
ちらりとこちらを見てきた時の表情はまさに容姿端麗といったものだろう。

一瞬で心奪われた。

まだ十五ともとれぬ少女の近くに歩みよる。

「これ、外套で暖まっていたのはそなたであろうか」

少女はこちらに気づくことはなく、舞っている。
その月を見る遠い目が、なんと美しいことなのやら。

嗚呼、その顔に触れてみたい。

ふと、危なげに手を伸ばした。

さら、さらさら

少女は腐り、砂になった。

その瞬間、また愚生も手から全身へ砂に溶けるような空気に呑まれた。
だがしかし、空気に呑まれた、呑まれただけなのである。

「この空気がもし本当に愚生を呑んでくれるのなら、愚生はもう君とゆけるのだがな」

「愚生の胸の高まりはずっとこの時この場で止まったままだ」

愚生は今日もため息を吐いた。


__「あるお話し。愚生の生。有名な大正時代の本だ」

今日も僕は図書館で一冊の本を取る。

「すみません。これ借りられますか」
「ええ。よろしいですよ」

その本を借りたまま、僕のお気に入りのスポットへ移動。

「あれ、君今日もいるのかい」
「……」

愚生の生の主人公と一緒の屋根の上に座り、隣の猫を撫でる少女を見やる。

「君ももう少し素直になればいいのに」
「……」

相変わらず猫を撫でる君は、普段の君とは似つかわしくない。

「やっと会えたのに寂しいな」

また、この時代ですら、今日も僕はため息を吐く。



お題『胸の鼓動』
※愚生(ぐせい)=昔の一人称。謙虚さを用いた言い表し方。
※教場(きょうじょう)=昔の教室の言い方。クラス。
※秋月(あきづき・あきつき)=秋のお月様。
※外套(がいとう)=コートの古い言い方。
※容姿端麗(ようしたんれい)=姿かたちが美しいこと。主に女性の形容として使われる。

あとがき
さてさて、今回はモダンチック、大正チックな話しにしてみました。それから最近読むものがミステリーホラー系なのでこちらも少しだけ?ミステリーですね。意外と考察されてみたら楽しいものになると思います。色んな想像をしてみてくださると筆者も嬉しい限りです。是非是非、ご自分のお考えのもと物語を楽しんでくださいね。筆者的には「何故少女は睨んだのか、現世でも無愛想なのか」と「何故作品名は『愚生の生涯』なのに本は『愚生の生』なのか」を考察してみると楽しいと思われます。後、愚生の生で二人が砂になるシーンもですね。結構印象強いシーンだったかなと思います。それではまた次のお話しで。

織川より※織川の日常です。暇だったら読む程度でご了承願います。
夜お眠りになる前の皆様こんばんわ。朝起きられたお方おはようございます。やっと5日が過ぎてお休みですね。人によっては休みじゃないよーってお方もいられるかもしれませんね。いつもお疲れ様です。あのですね、織川模試をやったんですよ。志望校二つあるんですけど一つが合格の可能性『A』でもう一つが『D』でした。差が凄いです。偏差値の差が大きいので仕方ない…ってことにしたいです!!!もう本当に!!!いや、英語ほぼなんて言ってるか聞き取れなかったよ!?皆もめっちゃはずしてたよ!?厳しくない!?泣きたいです笑でもまぁ、一つAとれてるんでいいんですよ。ハハ。因みに織川の偏差値は丁度中間ぐらいです。54、5ぐらいですね。Dの方は63です。ま、まぁ頑張ります。というかもうすぐしたらまた模試ですよ。早いって!!ねぇ!!止めよう!?そういうのよくないよ!?まぁ、やることにかわりはないんですけどね。では、織川はそろそろ寝ますといっておきながら寝ません。じゃあおやすみなさい!!!





9/8/2023, 4:41:09 PM