靉葉

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「クリスマスプレゼント、何がいい?」
と、父と母にきかれた。
『うーんとねー、まだねー、ないしょー!』
わたしは、そう答えた。
「そっか、サンタさんだけに教えてあげるんだね。サンタさんに、何が欲しいのかおてがみ書いたら多分なんでも持ってきてくれるよ。」
ふぅん、おてがみ、ねぇ。
『そうなの?おてがみかいたら、クリスマスツリーのとこにおいとく』
「じゃあ、クリスマス前までにおてがみ書いといてね。」
『うん!わかった、ままとぱぱはよんじゃダメだよ』
「誰かに読まれてもサンタさんには絶対届くから大丈夫だよ。」
『…わかったー、いまからかいてくる!』
私は、まだ四歳。だが、サンタさんの正体を知っている。だって、人生何回目かもう覚えてないくらい、死んでは生まれ変わっているから。
そして、私がいま欲しいプレゼントは、絶対に来ないということも、知っている。


〔サンタさんへ〕

ままのおかぜがなおるおくすりがほしいです。
まま、びょういんにもういかなくてもいいくらい、
げんきになってほしいです。
あと、ままとぱぱがなかよしになってほしいです。
たくさんおねがいしてごめんなさい。
でも、プレゼントはこれをください。

【ままとぱぱのむすめより】


我ながらなんというプレゼントを願っているんだ。
これが来ないことは、最初からわかっているけど、
なぜか少し悲しい。胸が痛い。
人生を何回も繰り返していると、これがほしい、とか、これになりたい、という感情が薄れてしまう。
___私にしかわからない感情かもしれないけど。
今世の私の人生は、今のところあまり楽しくはない。母の病気をきっかけに仲が悪くなってしまった。入院をしなければいけないほどの病にかかっているにも関わらず、母は入院を拒み、父はそれに猛反対。その結果が今の現状。
母が入院をしたがらないのは、大金がかかるのと、娘である私がいるから。娘の成長をすぐそばで見守っていたいという親としての気持ちがあるからだろう。
責任感とか、幸福感とか、そんな感じの気持ちが。
入院しないと本当にもうそろそろ死んでしまうのに。私の母はバカだなぁ。
私も、何回も親をやったことがあるから子供の成長を見守りたいという意思の強さは知っているけど、病気なら今の私の父の言葉に従って、入院をするべきだと思う。だって、治療もせずにすぐ死んだら、子供の結婚を見届けられないし、父は、心に傷が残って、一生辛い思いをして生きていかなきゃいけないから。
私は…まぁ、悲しむんだろうけど、どうせすぐ忘れちゃうんだろうな…
残酷というか、切ないというか、なんというか。



あぁ、サンタさん。母の病気を治して、今の私の父と母を幸せにしてあげてください。
無理なお願いということはわかっていますが、お願い、します。
___私のせいで、これ以上誰が不幸になるのは、見たくないんです。
私が不幸になるのはいいです。その方が、何倍も、何十倍も、何百倍も…

今年のプレゼント、ちゃんと届くかな。

12/23/2022, 2:57:13 PM