墓守

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夢のようなひと時だった。

今となってはそんなふうに思う。
君と過した数年間、ボクの中では瞬きのように短い時間だった。目を再び開けた時、その短さに驚く程に。

付き合いとしてはそこまで長くは無い。
高校が同じで、それからも何かと縁があって、たまに会って、世間話して、遊んで。普通の友達だ。
かけがえのない普通の友達。

いつだか君は空を見上げてこう言ったね。

「虹がかかっている」と。

喜びもせず淡々と述べたものだから、てっきり虹という現象が嫌いなのだと思ってしまったよ。私が不服そうに見つめていることに君も気づいていたんだろう?

「見え方が変わっただけで、その実、空は何も変わってないんだよ。それにいちいち感動するなら、僕はいつもの空にだって感嘆の声をあげているさ」

なんとひねくれた考えだ。
まあ、変に夢がないところが君らしいといえる。



いつだって、物事の本質を見抜く君へ。
ボクの大事な友達の君へ。

君は、ボクの目的に実は気づいていたんじゃないの?
ボクの心の内を知っていたんじゃないの?

なんで、知らないふりをし続けてくれたの?
ボクが君や、君以外のみんなにそうし続けたから?

「馬鹿だな、本当に馬鹿だよ」

君が数時間でも、数分でも、数秒でも早く、ボクに助けを求めていたら。
ボクは君のためにボクの命さえも捧げる事ができたのに。

何でボクに頼らなかったの?
聡明な君のことだから、ボクら一族のことは知っていたんでしょう?
友達の君になら、一族の天啓と関係なく、利用されることも厭わなかったのに。

雨が私の頬を静かに濡らした。

今日は雨上がりの晴天だ。
空には七色の橋が架かっていた。

『最愛の友人へ』

2/22/2025, 1:10:38 PM