黒山 治郎

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いくら作り置きしたかったとは言えど
流石に焼き重ね過ぎたホットケーキの塔は
積み方を少しでも誤れば簡単に崩壊しそうだ。

フランスの数学者であるエドゥアール・ルーカス
その人が作ったパズルを彷彿とさせる佇まいに
最早、一種の達成感すら覚えていた。

出来栄え自体は文句も無く、寧ろ上々
こんがり小麦色のつるりとした面に
ふくふくと上手に膨れてくれた境い目
出来立ての温かく優しい湯気に甘い香り
一枚ずつを見れば完璧であった。

しかし、全体を視界に収めると…
徐々に、とはいえ着実に
ピサの斜塔へ変貌しつつある。

手早く冷凍庫に空きを作らねば
お次は、タロットカードに
塔として描かれてしまいそうだが…

傾きつつある現状に合わせ、首を捻ると
視界の端には水切り籠を占拠する三枚の皿

…数学者の創り出した問題の数々は
間違いなく人々の発展に一役かっているなと
身を持って体験と共に体感したのだった。

ー 視線の先には ー

7/19/2024, 11:56:19 AM