あんず

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無色の世界


人と仲良くなるのが苦手だった。
嫌われるのが怖いから。

こう言えば嫌われるかも。
こうしたらウザがられるかもしれない。

学生時代の失敗を引きずって、
大人になってからも他人と深く関わることを
避けて生きてきた。

周りから見たらきっと
見えてるようで見えていない
透明人間のような存在なのかもしれない。

それで良かった。…はずだった。

だけどシロくんに出会って
世界が変わった。

彼は私と一緒にいたいと言ってくれた。

人付き合いが苦手な私を
それも貴方だと受け入れてくれた。
私がわがままを言えるようになったのは
間違いなく彼のおかげだ。

付き合ってしばらくしてから
彼に聞いてみた。

「どうして私だったの?」

そう言うとシロくんは
ふふっと笑って

「杏さんを初めて見た時、キラキラってしてたんだ」

と言った。

「キラキラ?」

「他の人とは違うって直感したの。」

「そんなこと言われたことないよ?目立たないとはいよく言われるけど。」

「めっちゃ目立ってたよ?少なくとも俺には」

「…そう、なんだ」


その真っ直ぐな言葉は、
私の心にずっと染み込んでいく。

そしてまたひとつ、
私が色づいていくのだ。





4/18/2024, 9:48:28 PM