【パラレルワールド】
「………あれ?」
大通りの交差点、ふと通りすがった君。
見覚えのある顔も、指触りのいいさらさらな髪も、特徴的な目元のほくろも、なにもかもが君の姿だった。
僕は思わずその手を掴んで、君の名を小さく呼ぶ。
「×××」
確かに君の名前を呼んだはずなのに、なぜか声は出ずに空気が漏れた。けれどそんな呼びかけに気づいた君は、僕を振り返るとくすりと笑った。
「…残念。私はあなたの×××じゃないわ」
風がつむぎ、一瞬目を離した隙に、君は霞のように消えてしまった。僕以外、誰一人として気づかずに…。
夢か現か幻か。けれども僕は君を知っていて、そしてきっと君も僕を知っていた。
「あなたとわたしが出会うのはまだまだ先よ」
だからもう少し待っていて―――。
そんな優しい声が耳に囁いた、そんな気がした。
9/25/2025, 4:40:29 PM