一ノ瀬

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 こんな夢を見た。
 先輩が笑っている。いつもどおり、明るく、にんまりと、いたずらっ子のような目で、時折神々しく、恐ろしいまでに美しく、笑っている。僕が隣で見てきた笑顔。僕だけが知っているその表情。
 それなのに、先輩の隣に、僕がいない。僕がいるのは、先輩の隣じゃない。先輩の隣にいるのは、僕じゃない。
 それを目にした瞬間、僕は隣のそいつを地面に引き倒す。馬乗りになり、顔を殴りつける。何度も何度も。目が潰れ、鼻がひしゃげ、僕の手が血だらけになり、それでも、何度も。
 そいつが誰なのかは結局わからなかった。僕ではないというその事実だけが重要だった。
 その体がピクリとも動かなくなった頃、僕はようやく隣を見る。先輩はまだそこにいる。何事もなかったかのように、変わらず悠々と微笑んでいる。
 先輩に手を伸ばす。指の先が真白い肌に触れそうになる。真っ赤な指が目に入って、思わず動きを止めた。先輩はそれを見ながら、不思議そうな顔をした。
 先輩の手が、僕の手を誘導する。細い首だ。絞め殺すのは簡単だろうと思った。自分が何をしたいのかはわからなかった。
「いいよ。君なら、いいよ」
 先輩がそう言って、笑った。神様からの赦しだった。僕の手が先輩の首にかかる。先輩には似合わない、鮮やかな赤が先輩を染める。笑っている、笑っている、先輩が笑っている。
 だから、先輩は僕だけのものになったのだ。
 そんな、夢を見た。

1/24/2026, 3:52:04 AM