6.
ある日、私は彼を殺した。
優しくて、かっこよくて、背が高くて、頭が良くて。
誰からも好かれる完璧なくらい素敵な彼を。
理科準備室で殺した。
その事件以来、生徒はもちろん、教師でさえ立ち入り禁止になった。
犯人は分からない。
証拠もない。
ただ、彼の、彼の身体から溢れ出た血の跡だけが、理科準備室に残っている。
それ以外は何も残っていない。
私のものだと確信がつくものは、何ひとつ残していない。
完全犯罪だ。
誰も知ろうとしない、探そうとしない、だから犯人も捕まらない。
私は彼を愛していた。
ただ、愛し方が違ったのか?
なぜ私は彼を殺さなければならなかったのか。
なぜ彼は私を求めたのか。
何度考えても理由が分からない。
目を瞑ると彼を殺した時の光景が瞼の裏に浮かぶ。
温かかった、彼の身体から溢れ出る血は。
美しかった。
最高だった、純粋で無垢な彼を自らの手で殺めることができようとは。
私は今でもあの感覚が忘れられない。
あの温かさを、あの最高の感覚を、もう一度。
5/25/2024, 11:51:39 PM