「風に身をまかせ」
朝だ。窓を開ける。風が強い。
「ニンゲンしゃん、おはよ!かじぇ、びゅーびゅーなの!」「おはよう。風強いね。」「ニンゲンしゃん!」「なにー?」「おしょとでたい」「ベランダならいいよ。」「わー!ありがと!」
強風も、朝に吹いているというだけでなんだかさわやかな気がする。押し流された空気に混ざって、いろんなものが飛んでくる。木の葉、ビニール袋、それから、たんぽぽの綿毛。あー、ベランダが散らかるなー。
「ニンゲンしゃん!」おちびが嬉しそうに聞く。「かじぇ、びゅーびゅーなら、おしょら、とべる?」「う~ん……。」
正直、想像には難くない。たんぽぽの綿毛みたいな髪の毛をふさっと広げて、風に身をまかせて飛んでいくおちびの姿は結構イメージとしてしっくりくる。イメージはできる……が、普通にけがをするのがオチなのが見えているのでダメだ。
「そうだね、もしかしたらマッドサイエンティストのあいつに頼めば飛べるかもね。」「□□ちゃんにおねがいちたら、とべるー?」「わかんないけど、多分?」『楽しそうだねえ!!!』うるさ!!!
『そ~らを自由に~と~びた~いな~?』やめろそこまでにしろ。『ちぇっ、せっかくあらゆる物理法則を無視してゆったりと飛べるようにしようと思ったのに!』「おしょら、とべるー?」『飛べるよ!』「やたー!ニンゲンしゃん、とべるよ!」
は??ちょ、そんなところに足をかけたら落ち───ない??
『だから言ったじゃないか!落ちないって!あと、それから!風に身をまかせて飛べるように設定しておいたよ!』何を、どうやってだ?!
『まあとにかく楽しんでおいでよ。』こうして風に乗りつつ空を散歩することになった。体が軽い、どこまでも行けそうだ。近所の公園、咲きかけのあじさいがたくさんある山の麓。だんだん家から離れていく。
これ、どうやったら家に戻れるんだ?『風に乗るか、あとは徒歩で帰ったらいいんじゃない?』結局最後は歩きかよ。
しばらく空中散歩を楽しんだ後、自分たちは家まで帰った。
その日、自分達が住む町でフライング・ヒューマノイドの噂が出回ってしまったのは言うまでもない。やってしまった。
『あぁ、すまないね!うっかりキミたちを不可視にする設定を忘れてしまったのさ!たまにはそういうこともwwwあっていいかと思ってねwww』絶対わざとだこいつ……!
それじゃ、『なんだい?』桜餅を買うのはしばらくやめようと思───『悪かったよ!!!フライング・ヒューマノイドの噂は彼らの記憶から消しておくから!!!』さらっと怖いことを言ったな、今……。
かくして、フライング・ヒューマノイド騒動は収まったらしい。もう強風はこりごりだ。
5/14/2026, 3:44:14 PM