「時計の針が重なって」
時計の針が重なって
鐘の音が周囲に響く
零時を告げて進む針
くそ、あともう少しだったのに
悔しがりつつ帰路を急ぐ
焦って階段をおりていると
足からスポンと靴が脱げる
ガラスの靴が階段に転がる
そんなものには目もくれず
逃げるように帰る
後ろで王子がこちらを
見ていることに気付きながら
少し縮んだかぼちゃの馬車に乗る
家に帰る頃には
すっかり魔法も解け
いつもの灰を被った少女に戻っていた
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翌日
王子様の命令で
ガラスの靴の持ち主を
探すことを知った
そしてついに私の家に来た
みんなが見守る中、
私の足に合ったサイズの
ガラスの靴を履いた
みんなが
「この子がシンデレラだったのか!」
と噂していた
そんな訳ないじゃない
本当にピッタリなら
走っただけで脱げたりしないし
ピッタリすぎて脱げないわ
私はシンデレラじゃないのよ
でも、
足のサイズで分かると言った
王子の命令だから
みんな疑うことをしない
よく見たら
顔が違うとわかるはずなのに
王子も疑問を持たずに妻にしてくれた
ほんと
世界って残酷なほど頭が弱いわね
そう思いながら
人懐っこい笑顔を顔に貼り付ける
本当のシンデレラは
家の地下にずっと居るのにね
9/25/2025, 6:30:48 AM