川柳えむ

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 子供の頃、『アキ』という名の友達がいた。
 小柄で、特にこれくらいの時期になると、童謡の『ちいさい秋みつけた』になぞらえて、「小さいアキ見つけた(笑)」とよくからかわれていたものだった。本人はとても嫌がっていたけど。
 小柄で、素直で、かわいくて。私はそんなアキが大好きだった。

 そんな、子供の頃の友情なんて、今でも残っている方が珍しい。
 そういえば、最近は「四季じゃなくて二季だ」と言われるくらい、夏の暑さが終わればすぐに寒い冬がやってくる。
 季節の秋も、そしてアキも、もう見つけることなんてないのかな。
 アキの家だって知っている。実家に帰れば会いに行けなくはない。
 それなのに、大人になるにつれ、そんな簡単なことができなくなっていくんだ。

 職場からの帰り道、足元に1枚の何かが舞い落ちてきた。
 拾い上げれば、それは真っ赤なもみじの葉。
 顔を上げると、目の前には赤く染まった大きなもみじの木が何本も並んでいた。
「秋だ……」
 秋を見つけた。
 昔一緒に綺麗に色付いた落ち葉を拾い集めて笑った、あのアキの顔が思い浮かんだ。


『秋🍁』

9/26/2023, 8:26:13 PM