#涙の理由
小さい頃から、君は泣き虫だった。
いつも僕の後ろに隠れていて、ぐすぐすと鼻を鳴らす音が聞こえていた。
それは、成長してからも変わらなかった。
虫が飛び出してきた時。
大事に育てていた花が枯れた時だって。
君は目いっぱいに涙を浮かべて、僕のところにやって来ていた。
何処ぞのかぐや姫のように、月を眺めて涙を浮かべたり、
夕焼け空に、その頬を濡らしたり。
未熟な僕には、なぜ君が泣いているのか、分からなかった。
だけど、これだけはわかる。
君はとても心が綺麗な人なんだってこと。
だから。ほら。
「ッ、いやだ、1人にしないでよぉ…っ、」
こうして僕の命の灯火が今にも消えそうな時ですら、僕のために涙を流してくれる。
ぽたぽたと落ちる雫が、まるで宝石みたいにきらめいて消えていく。それは僕への最期の贈り物のようだった。
君の涙の理由、今なら分かる。
もう、昔みたいに拭ってあげることはできないけれど。
どうか、その綺麗な心のまま、これからも生きて欲しい。
10/10/2023, 12:29:45 PM