えむ

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あまり文字を書くのは得意ではない
きっと綴る文字は弱々しく
時には字を誤ってはいるだろう
白い紙にある横1線の細く青いライン
それに添う事も難かしい
インクが染み読みづらい
自分でもわかる
だが書き残したい
私は紅い薔薇を愛してる
名前を不せても伝わるだろう
これを読むあなたにはきっとわかりやすいはずだ
私は紅い薔薇に全てを貢げたいと思う
体の一部だけじゃなく全てだ
髪の一本
爪の一欠片
眼球も皮虜も筋肉も骨も内蔵も全てだ
全てを紅い薔薇である…彼の者に貢げてくれ
骨に皮が貼り付いたような肉体だ
こけた頬に眼球の丸みがよくわかる顔だ
髪は黒に白交じりだ
短く整えた爪は割れている
紅い薔薇はそんな私さえ愛してくれるだろう
私は紅い薔薇を愛してる
これを読むあなたならわかるだろう
言葉に嘘為りないということが
きっとわかるだろう
朽ちた体は紅い薔薇に送ってくれ
有限の時は終わる
私は紅い薔薇と無限を生きようと思う
何一つ残せなかった私だが
欲を一つ残していく
これを読むあなたが
あまりにも読みづらい手紙を読むあなたが
この欲を叶えてくれる事を信じる
私は紅い薔薇を愛してる
そして
今この手紙を読むあなたを信じてる



お題:秘密の手紙
〜あとがき〜
秘密の手紙を見つけたあなた
虫が這うような文字を見たあなた
誤字に塗れた文章を読むあなた
…あなたは最後の言葉をどう受け止めますか?

12/4/2025, 11:45:31 AM