心の迷路
「……僕って、なんなんだろう」
珍しく沖田がネガティブな言葉を口に出す。
誰しも迷い苦しむことは来る。それを真に受け止めた時、人はみな死という存在を選んでしまう。
迷路で例えるに、出口を見つけられなくてリタイアしてしまうようなものだろう。
隣に左之助もいないので、俺がその質問の答えを言ってやらないといけない。
「俺には分からん。……だが、自分の身体と心が一緒だと思ったことは無いな」
「斎藤さんも、そう思う時があるの?」
「いつも、だ」
いつも迷っては出口を求めている。だが、一人で探して出口を見つけられなことなんて、一度もない。
そう考えると、俺は孤独ではないのかもしれない。
「……いつも、苦しんでるってこと?」
その無鉄砲な発言に年下らしさを感じるも、迷っている姿はどうも年下とは思えなかった。
きっと沖田は、俺よりももっと先を見据えて、苦しんでいるのだろう。考える必要も全くない、ただの妄想に近い現実に。
「ああ。だが、いつもその時には隣にいるんだ」
「何が?」
隣にいる。否、隣に来てしまっている。行ってしまう。そうじゃないと、不安で仕方がないから。
心の迷路に迷った時、解決する方法としてはその迷路を共に解いてくれる人が隣にいることだ。その人と共に歩めば、必ず出口は見える。
つまりは、一人で抱え込んでしまっているというだけ。
一人で苦しんでいる時、この世で一番苦しいのは自分だと思い込む。それは単なる勘違いであって、本当はみんな苦しいのだと。
「総司と斎藤、珍しいな」
俺と沖田はその声に反応して振り向く。そこには、案の定左之助の姿があった。
「……沖田」
「なに?」
「コイツが、いるんだよ。いつも」
何処か皮肉ったように言ってしまっが、いつも尊敬していて、とても頼りにしている。
直接的に行ったことはないが、いつも共にいるというのがその証拠だろう。
「あ?悪口か?」
「左之助、違うよ。斎藤さんは、左之助を頼りにしてる。そうでしょ?」
「ああ、そうだ」
素直に褒めると顔を逸らしてしまうのが、左之助の面白いところだ。
喧嘩したって、意見が違ったって、それは短所ではなく長所になる。しかしそれはそういうのが短所と自覚して始めて、長所として扱える。
「……確かに、二人ともいつも楽しそうだね」
どういう場面からその言葉がでてきたのか分からず、目を丸くしてしまった。左之助も同じなようで、目が合ってしまった。
気が合う、といえばそうなのだろう。心に介入してきたって、不快感を感じないのが一番いいところだ。
「総司は、楽しくないのか?」
そういえば沖田は、今悩んでいた。俺との相談で、解決の糸口が見つかっていればいいのだが。
沖田は今までとは違い、爽やかな表情で笑みを浮かべる。
「楽しい。ふたりがいるから」
俺と左之助は下を向いて静かに、大きく笑う。
「ふたりは、僕が苦しんでる時に助けてくれる?」
年下らしい甘えた声で、俺たちに尋ねる。だがその表情は志があって、否定できなかった。
否定するつもりは毛頭ない。そう信用できる相手だからだ。
「……勿論」
「総司、心配すんなって。な?」
左之助が沖田の肩に手を回して、気分上々なのか大きな口を開けて笑う。
こんな平和で暖かい日々が続けばいいと、心から思っている。苦しい程に。
11/12/2025, 1:30:21 PM