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 学校からの帰り道。
 いつもは付き合っている彼女と帰るのだが、今日は一人で帰っている。
 今日、彼女と些細なことで喧嘩した。
 一応謝ったけど、なんとなく気まずくて、そのまま出てきた。

 強い風が吹いてきて、思わず体が震える。
 二人なら気にならない寒さも、さみしい独り身では寒さが身に染みる。
 付き合う前は、今年の冬がこんなに寒いとは気づかなかった。

 寂しい。
 そんな感情が頭を駆け巡る。
 失ってから気づくと言うが、今の自分には痛いほど分かった。

 明日彼女と仲直りしよう。
 ちゃんとはっきり言葉にして。

 そんなことを考えていると、突然後ろから抱きしめられる。
「コラ、なんで一人で帰るのさ」
 喧嘩したことなど忘れたかのように、明るい声で話しかけてくる。
 いや忘れてないからこそ、このノリか。

「ゴメン。忘れてた」
 自分も乗っかって、喧嘩したことなど忘れたように軽く返す。
 すると彼女は「ひどい」と連呼し始めた。
 彼女が「ひどい」と言うたびに耳に彼女の息がかかってこそばゆい。
 さてはわざとやっているな。

 けどそれとは別に、息が荒い気がする。
 もしかして……

「会いたくて走ってきたの?」
「違うよ。寒かったから体を暖めるために走ったの」
 言い訳が下手なことだ。

「君も寒いんじゃない。
 私はちょうど暖まってるから、熱を分けてあげよう。
 私の優しさに感謝しなさい」
 さっきより抱きしめる力が強くなる。
 気のせいかもしれないけれど、彼女の熱が自分の体に伝わってくる。

「もういいだろ。離れろ」
「もう寒くない?」
「ああ、寒くない」
 自分の言葉を聞くと、彼女は体を離して隣に立って、これ見よがしに手を出してくる。
「じゃあ、帰ろうか」

 手を繋ぐと、彼女の暖かさが手から自分の身に染み込んできた。
 帰り道はもう寒くなかった。

1/12/2024, 9:58:23 AM