街を見渡せる丘からは、見慣れた夜景の姿は確認できず、ただ墨を流し込んだような夜闇がどこまでも広がっているだけだ。
あんな遊びするんじゃなかった……。
私だけではなく、みんなも同じことを考えていることだろう。
マンションのエレベーターを使った遊び──決まった手順で昇降を繰り返すと異世界に行けるというオカルトチックな遊び──
ふざけ半分でやってみたばかりに、まさか本当に異世界に迷い込んでしまったとは。
見た目は私達がいた世界と全く同じだ。けれど、決定的に違うのは無人だということ。
無人ゆえにインフラが機能しておらず、街に明かりがない。だから、それまで当たり前にあった夜景を見ることができないというわけだ。
明かりがない=電力が供給されていない──つまりそれは、エレベーターも動かせないということ……。
エレベーターが使えない=元の世界に帰る術がない。
そんな恐ろしい事実を叩きつけられ、私達は呆然と立ち尽くすしかなかった。
テーマ【夜景】
9/18/2022, 10:54:57 AM