かたいなか

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今年度最後の仕事の日。朝の占いランキングで私の9月が微妙な順位だったので、別の局の星座占いも一緒に観た。いわゆる抱き合わせ商法だ。
ふたつの占いを総合すれば、今日は何気ないことが福を呼ぶかもしれなくて、ラッキーアイテムはペールパープルの花の画像。金運を上げてくれるという。
でもあざとい行動は逆効果だとか。
ペールパープルの花って。そもそも花自体、桜くらいしか撮りませんけど。何人居るのよ9月生まれで、その色の花の画像手元にあるの。と、悶々していたら。

「おはようございまー……」
おはようございます。職場の自分の席につくとき、先に席に座ってる先輩のスマホ画面がチラリと見えて、
まさしくペールパープルと思しき花の、どこかの山か森で撮った写真がガッツリ映っていた。
金運だ。私の金運アップアイテムだ。
何気なく見てしまった先輩のスマホ画面が、占い通り福を呼んでくれそうだった。

「おはよう」
先輩はいつも通り、淡々と、平静としていて、
「今月で異動の尾壺根係長から、挨拶のチョコが届いている。一応貰っておけ」
私の机の一点、不自然に置かれているなんか高級そうなチョコの数粒を、視線で示した。
あー。はい。通称「名前通りのオツボネ様」。
今までお世話になりました(棒読み)

それより金運だ。ペールパープルの花の画像だ。
先輩からどうにかして貰えないものか。

「ねぇ、」
最近花増えてきたね。桜ちょっと散ってきたね。
何気なく花の話に誘導して、先輩から花の画像を頂こうと、カチカチ策略を組み始めた矢先。
『あざとい行動は逆効果』
占いの、悪い方を思い出した。
これは「あざとい」ではなかろうか。何気ない話題誘導というより、魂胆ちょっと見え過ぎで、あざとい方に極振りしまくってないだろうか。
「えっと、……あの、」
疑った途端、私は何も言えなくなった。
これ、選択肢間違えれば金運逃げてくパターンでは。

「?」
そんな金運的葛藤を私が抱えていることなど、先輩が知る筈もなく。ただ不思議そうに顔を傾けている。
「ああ、私の分か?」
長考の結果、私が先輩の机に上がっているチョコも欲しがっている、と思われたらしい。
「やるよ。ここのは美味いぞ」
スマホをしまい、チョコをつまんで、私に寄越した。

違う。違うの。そうじゃないの……。

「悩み事か?」
「ちがう」
「なにか、身体の不調?」
「ちがう」
「チョコ?」
「たべる……」

3/31/2023, 12:11:02 AM