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二人並んで、この隅田川沿いのデパートの下を行けば、連なる繁華街の、街頭の下に、赤いテープが下がっていて、繁華街の年の暮れのセールを表しているとわかる。
彼女の自転車は、ちょっと高価なマウンテンバイクで、社長のお金で買ったのだと、のたまう。
社長というのは、貿易会社の社長で、最近のベトナム戦争の特需景気にあやかって、貿易品がよく出るのだという。
ヒッピーたちは、ラブアンドピースをかかげているが、俺みたいな根暗は、そういうのにもかまけられず、毎日ぐうたら過ごしている。
ビートルズは、すごい影響を与えた。
なんてったて、オノヨーコは、偉い人だ。
ヒッピーじゃない俺ですら知っているのだから、なんともはや。
いーじゃん。いーじゃん。毎日幸せで。
苦労がないって、幸せじゃん?
「それって、本当に幸せ?」
って、彼女は言う。
「幸せだよ」
って、俺は返す。
幸せってさ、毎日食ってる学食の百五十円のAランチみたいに、もっともっと食いたいんだ。
たらふく食って、オナニーこいて、それで、今日も寝るのが、俺の幸せだ。
って、言ったら
「単純ね」
って、返された。

8/14/2023, 11:20:34 AM